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探究する喜びの保障

 急速にオンライン化が進む中、大切にしたいことって何だろうか?と考える機会が多くなった今年度。研修や会議などもオンライン化に切り替わっていき、空間を超えて繋がりやすくなった反面、温度感が伝わりにくくなってきたのかもしれない…と思ったりもします。

 そんな中、保育者一人一人の温かな想いをお伝えする方法として、11月から園内の出入口近くに一週間の活動予定を貼りだしています。その日のねらい等に対する各々の思いを保護者の皆様と共有していくことで、子どもたちが日々の保育の中でどんな学びや発見をしているのか、職員がどんな風に子どもたちに寄り添っているのかをより具体的にお伝えできるように、との思いではじめました。子どもたちの「今」をより深く共有するため、ぜひ送迎時等にお目を通してみてください。

 そして、職員の子どもたちへの寄り添い方を伝えているもう一つの方法が、園内に掲示しているドキュメンテーションがあります。保育ドキュメンテーションは、イタリアのレッジョ・エミリア市発祥の教育法で用いられており、子どもたちの学びのプロセスを丁寧に捉え文字や写真で発信し、子どもたちや保育者が活動などを振り返り、次へとつなげていくアプローチ法です。子どもたちが今、何に心を動かされているのか、そして、どのように考え工夫し何かを見出していくのか、その過程を大切にすることに教育があり、保護者や保育者と子どもが同じ目線で関わり続ける事が出来れば、おのずと豊かな学びに繋がるだろうと私自身も考えています。

 

 先日、職員が掲示してくれたドキュメンテーションにこんなエピソードがありました。

 フリー保育士として1歳児クラスに入った時の事。Rくんが砂を手でつかみ取っては、1か所に落とし、そこに山が出来ていたのを見て、つい「お山つくってるの?」と尋ねてしまったが、そのまま集中しているR君。その姿を見て、「違うのかもしれない」と思った彼女はそのまま様子を見守る事に…R君が砂をつかむ際にそこに残った手の後を消さないように少しずつずらしながら砂を取り、山に持っていく一連の流れに気付いた彼女はこう綴っていました。

「手の跡、砂の感触そのものを楽しんでいるように感じられた。大人の感覚で何をしているのか決めつけることなく、子どもが本当に楽しんでいる事を見逃さないようにしたい。」

 このドキュメンテーションは2部構成になっており(詳しくは園内のドキュメンテーションをご覧ください)、黙々と遊んでいたRくんの周りに他児が集まり、平行あそびをしている様子についても書かれていますが、最後に彼女は以下の言葉で締めくくっていました。

「保育士の存在そのものが(他の児の遊びにも)興味を持つきっかけになることがある。そんなふうに、子どもと子どもをつなぐような存在としてかかわれたらいいなと感じる。」 

 

 

幼児期の教育の中心は遊びや日々の生活の中にあります。遊びを通して学んでいる姿をそのまま受け止め、純粋な「探究する喜び」を保障できる場を提供するのが私たち保育士や保育園の担う役割なのだと思います。

 

記・園長